6月に旬を迎える梅。畑などでも青い実をつけた梅の木を見かけるようになります。
日本では昔から、花と言えば梅の花のことで、観賞するのはもちろんですが、
梅の実も縁起物や薬として大切にされてきました。
家庭の食卓には、必需品だった梅干しも、今では食べる人も減ってきたようです。
体にはとても良い効果が沢山あるので、是非食べて欲しいものの一つです。
今回は、梅の歴史や効能について、梅干し・梅酢について紹介します。
梅はいつから梅干しに?
日本では、古くは花と言えば、梅の花のこと指していました。
私たちの生活の中では、当たり前のようにある梅干しですが、いつ頃から作られるようになったのでしょうか?
梅の歴史と普及について
梅はどのように日本で広がって、梅干し作りはいつ頃から広がったのでしょうか?
梅は「烏梅・うばい」という漢方薬として輸入されました。
烏梅とは、未熟な青い梅の実を燻製・乾燥させたもので、烏の様に真っ黒な色をしていて、現在でも使われている漢方薬です。
その後、梅の木が入ってきて、梅の実よりも梅の花のほうが親しまれていきました。
奈良時代の和歌集「万葉集」には、梅の花を題材にした和歌が多く掲載されています。
梅の実は、柿・桃・梨・あんずなどと共に「生菓子」と言われて、加工して食べていました。
奈良時代は、「菓子」というと「果物」のことでした。
平安時代になると、梅の実が活用されるようになっていきました。
日本最古の医学書「医心方」には、梅干しの原型とも言える「梅の塩漬け」が薬として使われていたと記載があります。
また、村上天皇が疫病にかかったとき、梅干しと昆布を入れたお茶を飲んで、回復したという記録があり、梅の実は効能が高く良いものだと広がりました。
元旦に飲む縁起物として今でも受け継がれている「大福茶」の起源ともされています。
そして、村上天皇が治癒した年が「申年」だったことから
「申年に収穫された梅の実は特に良いものである」と重宝されています。
鎌倉時代の『世俗立要集』という文献には、
梅干しは僧侶の間で酒のつまみとして食べていたとあります。
その後武家の間にも梅干しは広がり、出陣の際には、縁起をかついで必ず梅干しを食べたとも言われています。
そして、『承久の乱』の際に、保存性が高く殺菌効果のある梅干しとおにぎりを、
幕府が武士に配ったことがきっかけに、梅干しは全国に広がったと言われています。
正月には「椀飯振」という行事が行われていました。
これは、一年の活躍を願う儀式として、御家人が将軍に食事をふるまう行事で、ここにも梅干しが登場していました。
将軍に豪華な料理を振る舞う様子は、「大盤振舞(おおばんぶるまい)」の語源とも言われています。
戦国時代に入ると梅干しは広く普及していきます。
梅干しは保存食としてだけではなく、傷の消毒に使ったり、戦場での食中毒や伝染病の予防など陣中食としても活用されていました。
武士たちは「息合の薬・いきあいぐすり」として、食糧袋に「梅干丸・うめぼしがん」を常に携帯していました。
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梅干丸とは、どんなものだったのでしょうか?
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「玄米の粉」「氷砂糖の粉末」と「梅干しの果肉」で練ったものです。
「息合の薬」とも呼ばれ、激しい戦いや長い行軍での息切れを整えたり、
生水を飲む時の殺菌用などに使われました。
梅干しを見ることで酸っぱさを感じて、唾液が出るので喉の渇きをうるおしたとも言われています。
江戸時代に入ると貴族や武士だけでなく、庶民も梅干しを食べられるようになりました。
江戸中期には、町なかでも加工品としての梅干しが売られるようになりました。
また、梅干しの紫蘇漬けが普及し始め、梅を砂糖漬けにした甘露梅など、多くの梅の漬け方が生まれました。
梅干しの栄養と効果
梅干しは、体に良い・元気が出るイメージがありますが、実際にはどうなのでしょうか?
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梅干しは、酸っぱいけど、体に良いのでしょうか?
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酸っぱい味の梅干しですが、酸性食品ではなく、アルカリ性食品なのです。
様々な効果がある、梅干し魅力を紹介します。
梅干しの栄養について
梅のすっぱい味は有機酸というもので、主な成分はクエン酸です。
青梅にはリンゴ酸が多いですが、熟していくにつれてクエン酸が大部分を占めるようになります。
クエン酸は、疲労の原因となる乳酸を分解する疲労抑制効果があると言われています。
また、血液をサラサラにしたり、血流を改善して免疫力を高めたり、体内のエネルギー代謝を活性化させたりと、疲れた時にオススメの食品です。
そして、クエン酸の他にも、ポリフェノール・ビタミンE・カルシウム・カリウム・マグネシウム鉄分といった体に必要なミネラルなど、大切な栄養素が豊富に含まれています。
カルシウムや鉄などのミネラルの吸収を助ける、キレート作用を持つことも知られています。
梅干の効能について
「1日1粒の梅干しで医者いらず」という言葉を聞いたことはありませんか?
梅干しには、様々な言い伝えがあり、昔から健康食品として身近だったことが分かります。
「梅は三毒を絶つ」
「朝の梅干しは一日の難のがれ」
「朝の内に梅干しを食うと一日喉が渇かない」
梅干を食べると、その日は災難に合わずにすむと言われたり、
昔から毎日、梅干しを一粒食べることで元気に過ごすことができるとされてきました。
現在の私たちの梅干しの活用法として、主なもの2つです。
●食中毒の予防
梅干が食中毒を予防することは昔からよく知られています。
お弁当のご飯の上や、おにぎりの具に入れて殺菌効果に利用します。
細菌の繁殖を抑え、食べ物が腐るのを防ぎます。
●胃腸への効果
梅干しは、唾液の分泌を促すため、口内の粘膜の保護や殺菌、糖分の分解、胃液の分泌を促して消化能力を高めるなどの効果があります。整腸作用や動脈硬化の予防にも役立つと言われています。
また、食欲増進の効果もあるため、夏バテや食欲が落ちた時にも食べられています。
梅酢を活用しよう
梅干しが良いのはわかるけれど、あの酸っぱさが苦手という方も多いかもしれません。
おにぎりやお弁当に入れたくても、食べられないものが入っているのも辛いですね。
そんな時に、梅干しと同じ効果があり、取り入れやすい「梅酢」というものがあります。
梅酢とは?
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梅酢とは、どんなものなのでしょうか?
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梅を塩漬けにするときに梅から出てくるエキスのこと。
梅干しを作る時に出てくる液体です。
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お酢とは違うのでしょうか?
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梅酢と書きますが、酢ではありません。
お酢は発酵させてつくるもので、酢酸を含んでいますが、
梅酢は塩と梅のエキスが凝縮したもので、クエン酸やリンゴ酸、ポリフェノールなどの有機酸が含まれていて、一般的な醸造酢と違います。
【塩梅】には、梅酢が使われてた?
「いい塩梅に仕上がったね」「今日の塩梅はどうですか?」
などという言葉を聞いたことがありませんか?
料理の味加減を指す「塩梅」という言葉は、塩と梅酢が語源といわれています。
料理の味付けには、お酢よりも梅酢のほうが古くから使われてきました。
「塩と梅酢を合わせることでちょうどよい味加減になる」という意味として使われます。
梅酢には、防腐作用と殺菌作用があります。
有機酸や梅ポリフェノールには、細菌の増殖を抑える効果があり、食中毒の予防になるといわれています。
また、梅酢に含まれる塩にも殺菌作用があるため、塩代わりに使うのもオススメです。
梅ポリフェノールは、抗ウイルス作用があると言われています。
梅酢を使ってうがい薬の代わりにするのもオススメです。
白梅酢と赤梅酢
梅酢の種類には
梅と塩だけでできる「白梅酢」と、白梅酢に赤しそを加えて作る「赤梅酢」の2種類があります。
白梅酢は梅干しを漬けるときに出るエキスのこと。
梅干しを漬けたとき、最初に上がってくるのが白梅酢です。
塩と梅のみのシンプルなもので、色がつかないので、料理の下ごしらえなどにも使いやすいです。
酸味と塩味のバランスが良く、やさしい塩味と梅の香りがあります。
白梅酢に赤紫蘇を漬け込んで作られます。
紫蘇の香りと鮮やかな赤色が特徴です。
風味や色味を生かして漬物にしたり、酢飯の寿司酢などにも使われます。
紫蘇の香りと成分が溶け込んでおり、梅と紫蘇の効果が両方楽しめます。
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梅酢は、水は炭酸と割って梅酢ドリンクにすると、汗をかいた時や、夏バテ、
熱中症予防などにオススメです。砂糖が入ってないので、お好みで甘味を加えられて、スポーツドリンクよりもヘルシーです。
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梅干しは苦手だけど、梅酢をご飯にまぶして、おにぎりを作ったら、
好きな具を入れて食べられて、殺菌効果もあるから安心かもしれません。
まとめ
梅干しの歴史や効果、そして、梅酢の紹介や活用方法について紹介しました。
今回は、梅雨~夏に使いたい梅干しと梅酢についてのお話で、効果効能については一部の紹介でしたが、梅には体に良い成分がいっぱいです。
自宅で梅干しを作れば、梅酢はその途中で手に入ります。
お店にも、白梅酢・赤梅酢どちらも販売されていますので、お好みのほうを使ってみてください。
梅干しを自家製で作ってみませんか?
梅干しと梅シロップの作り方について、こちらの記事で紹介していますので、参考にどうぞ。https://kurashiniikasu-wanotie.com/lifehack/1228/
こちらの記事では、6月の二十四節気「芒種」と期間中の行事などについて紹介しています。https://kurashiniikasu-wanotie.com/koyomi/1310/